このページでは、Javascriptを使用しています。
 
 

ホーム>耳鼻科ナースの部屋

耳鼻科ナースの部屋

看護研究

耳鼻科外来のナースとして学んだこと、感じたことについてこちらでご紹介させていただきます。

・平成22年度日本看護学会 成人看護U

「通年性アレルギー性鼻炎患者の日常生活調査」

〜よりよい治療プログラムを目指して〜

<これまでの学会発表報告>

・平成21年度九州看護研究学会

「早朝診療から見えてきた看護

         〜耳鼻咽喉科外来の現状より〜」

・平成19年度日本看護学会 小児看護

「反復性中耳炎に対する外科治療の現状と外来看護師の役割」

〜チュービング症例の臨床経過の分析を通して〜

・平成19年度日本看護学会 成人看護U

「CAPA脱落例に対する看護介入」

〜耳鼻科での外科的補助療法を通じて〜

・平成18年度日本看護学会 成人看護U

「眩暈の理学療法における看護の役割」

・平成15年度日本看護学会、小児看護
「難治性中耳炎の遷延要因〜入院症例の分析〜」

・平成14年度日本看護学会、小児看護
「鼻かみ教室の開催〜耳鼻科診療所での試み〜」

・平成13年度九州地区看護研究学会
「外来診療所での身近な診療録開示」

・平成12年度日本看護学会、地域看護
「耳鼻咽喉科診療所における院外看護活動」

・平成11年度九州地区看護研究学会
「外来看護サマリーを通した医療連携」

 

      <日本看護学会成人看護U>

             平成22年8月31日

 

 福岡県の福岡国際会議場で日本看護学会成人看護Uが開催され、私達もポスターセッションという形での発表機会を頂きました。今回出発前に突如発生した台風7号のニュースを受け、「またか」と前回の学会で関東直撃の台風に遭遇した出来事が脳裏をよぎりました。福岡では激しい雷雨に出迎えられ、沖縄では久々の台風直撃でしたが、交通トラブルに巻き込まれる事もなく無事、発表を終え帰ってくることができました。

 今回の発表は、「通年性アレルギー性鼻炎患者の日常生活調査」〜よりよい治療プログラムを目指して〜とのタイトルでQOL(生活の質)にスポットを当てた研究内容でした。鼻炎による様々な困り事を看護の視点で分析し、今後の課題を検討しました。他県の看護師さんとの意見交換だけでなく、色鮮やかなポスターに多くの御褒めの言葉まで頂き、大変ありがたく思いました。看護研究の発表も以前は技術的な内容が多かったように思いますが、年々QOLの改善や癒しの看護に力を入れてきているように感じました。今回の学会で得た内容は今後、私達が目指す看護の参考にしていきたいと思います。

 学会の後は福岡の美味しい海の幸を堪能し、勉学にも体重にも実りの多き旅でした。


<はじめに> 通年性アレルギー性鼻炎(以下鼻炎と略す)は、くしゃみ、鼻閉、鼻漏の3症状を特徴とする慢性的な疾患で日常生活にも影響を及ぼしやすい。その為、鼻アレルギー診療ガイドライン1)でもQOL(生活の質)の評価を推奨しており、先行研究でも多くの鼻炎に対するQOL調査が行われてきた。しかし患者の思いを分析した研究はほとんどなく、実際の診療でも、その思いが治療に十分に反映されていないのではと感じる症例を多々経験している。そこで今回、よりよい治療選択のサポートができるよう鼻炎による困り事の日常生活調査を行ったので報告する。 <研究目的> 鼻炎を持つ患者の日常生活における困り事を明らかにして、今後の看護の一助とする。 <研究方法> 調査期間:平成20年11月〜平成21年3月 調査対象:初診で通年性アレルギー性鼻炎と診断され、研究に同意が得られた31名 。 調査方法:半構成的面接法により、1.日常生活での支 障、2.具体的な困り事の内容について調査した。面接 は個室で行い、面接時間は10〜20分であった。 分析方法:1は単純集計した。2は語られた言葉を整理、 要約し内容の類似したものにまとめ、サブカテゴリーを 作成した。更に抽象的レベルでの類似性を考え、それら を大きくカテゴリーにまとめた。分析、分類の偏りを避 ける為、研究者間で内容が一致するまで比較、検討を繰 り返した。 倫理的配慮:面接を行うに当たり、研究の趣旨を説明し 面接内容を他の目的に使用しないこと、研究結果を公表 すること、研究参加への拒否、中断は自由であり、協力 の如何によって今後の治療に影響がないことを説明し同 意を得た。                                          <結果> 対象者:男性9名、女性22名、平均年齢:33.8歳 1.日常生活の支障度 支障を感じる71%、手につかない程、苦しい19%、 全く何もできない7%、支障なし3%

2.具体的な困り事の内容(一部抜粋)

カテゴリー

サブカテゴリー

仕事の支障

鼻症状で、仕事が中断する

症状がひどいと仕事も休む 

家事の支障

鼻症状で家事が中断する

掃除や布団の上げ下ろしで症状が悪化

社会生活の

支障

他人の前での鼻かみが恥ずかしい

急に症状が出た時の対応に困る

睡眠の支障

イビキを指摘されることが多い 途中で目が覚める(眠りが浅い)

寝ている時に呼吸が止まると指摘される

精神的・身体的症状

考えがまとまらず、ボーとする

だるいと感じる

<考察> 今回、鼻炎により日常生活で多くの支障があることが明らかになった。鼻炎の治療は、病型や重症度に応じた薬物療法や手術療法の選択、抗原回避のセルフケアなど多彩な組み合わせで実施されている。しかし、その治療選択基準が、受診時の鼻所見だけで行われてしまうとQOLの改善には結びつかない恐れがある。今回の研究でも鼻症状により、仕事や社会生活にまで影響が及んでいる事がうかがわれる。特に睡眠の支障は深刻で、途中覚醒や睡眠時無呼吸症候群が疑われる症例も見られた。鼻症状には日内変動がある為、受診時の状態だけでなく、その日常生活にも目を向けていく必要性を痛感した。そこで今後は、QOLの支障度が効率的に医師に情報提供できるような問診表の見直しを検討していく予定である。QOLの把握は治療選択や治療評価に役立つだけでなく、患者の思いを引き出すコミュニケーションツールにもなり得ると考えるからである。患者の思いを傾聴し、医師と患者の間に入ることで、よりよい治療プログラムを一緒に作っていけるよう努力していきたい。 参考文献

1)馬場廣太郎:2005年版鼻アレルギー診療ガイドラインダイジェスト、(株)ライフサイエンス

▲ 上へ(一覧へ)戻る

 

       <九州看護研究学会に参加>

             平成21年11月7日

 平成21年11月7日宮崎医科大学で開催された、九州看護研究学会に参加させて頂きました。

        「早朝診療から見えてきた看護」

        〜耳鼻咽喉科外来の現状より〜

【はじめに】A病院は平成17年4月より地域における診療時間帯の医療分担を目的に午前7時受付7時半診療をスタートさせた。県内初の試みの為受診動向は予測できず、充分な準備もできないままのスタートであったが、4年が経過し、早朝時間帯における診療実態調査を行い、患者アンケートに基づいた看護の今後の課題について報告する。

【用語定義】早朝診療:7時半からの診療とする。

【目的】早朝診療における患者の動向について、患者属性の調査と患者アンケートより現状を分析し今後の看護の視点を検討する。

【研究方法】調査期間及び対象者:平成21年4月1日〜4月30日に早朝診療を受診した患者及び患児保護者380名。調査方法及び内容:質問紙調査。内容は就業率、看護師からの説明理解の有無、早朝診療を受診している理由等である。受診の特徴として平成21年4月〜6月の早朝診療受診割合、外来での手術割合などである。分析方法:単純集計。倫理的配慮:研究以外で使用しないことを口頭及び紙面を用い承諾を得、回収箱を設置し回収した。

【結果】

1.回収率:380名を対象に調査、回収率100%。

2.患者特徴:@早朝診療受診の割合:早朝診療53%、

                    その他47%(N7618)

A 外来手術割合:鼓膜切開術…早朝診療78%(内3歳未満62%)、

                                             その他22%(N229),

   チュービング…早朝診療68%(内3歳未満83%)、その他32%(N 264)

3.早朝診療アンケートの調査

@患者内訳:保育園・幼稚園児55%、その他45%

A 就業率(本人及び保護者):就業している80%

                   就業していない18%、無回答2%

B 看護師からの説明:理解できた79%

               理解できない29%、無回答1%

C 早朝診療を受診している理由(一部抜粋):仕事・学校・保育園に行く前に受診できアドバイス、相談ができる。病気について十分な説明を受けることができる。外来手術等、早い時間に終わるので都合が良い。仕事・学校の前に受診ができる。時間が有効に使える。夜から具合が悪い時、早朝から診てもらえるため。

【考察】

 早朝診療時間帯を受診する患者は全体の53%占め、開始当初の予想以上である。その内訳を分析してみると就学前の乳幼児が多数を占め、しかも外来手術の鼓膜切開・チュービングを要するような難治例であり、その患児のうち55%が集団保育を利用していた。又、患者及びその保護者の就業率が80%という結果は、共働き家庭が多いと予測される。中耳炎難治例は、耳漏吸引等の処置が連日必要で、必然的に通院回数が多くなるが、早朝診療は仕事をしている保護者には受診しやすく、難治例の通院に繋がっていると考えられ、早朝診療に患者が集中したのではないかと思われる。一般的に頻繁の通院は、保護者並び家族に精神的・肉体的・社会的に負担がかかり治療の中断という阻害因子の一つになると考えられる。継続治療に繋げるためには、患児の保護者及び家族に疾患を理解してもらい、現在行われている治療の目的、家庭でのセルフケアの重要性、内服のコンプライアンスを高める援助が、看護師に求められる重要な役割である。そのためには、今回の調査結果に基づいて早朝という限られた時間帯に効率的な看護が提供できるような人員配置、指導マニュアルの強化を目指したいと思う。

【結論】

 早朝診療は社会的ニーズが高く難治例の通院も多い為、看護の必要性が高い。短時間で個別性に合わせた充分な看護を提供する工夫が必要である。


▲ 上へ(一覧へ)戻る

 <第38回日本看護学会・小児看護に参加>

        平成19年9月5日・6日

 茨城県つくば国際会議場で小児看護学会が開催され、私達もポスタ−セッションで発表を行いました。ちょうど発表の日は大型台風が関東に上陸するとの情報があり、台風の進路と交通情報を逐一確認しながらの慌しいスケジュ−ルとなりなした。幸いにも飛行機の便の変更もスム−ズにいき、発表を終えて台風が関東に上陸する前に沖縄へ戻ることができました。

今回の発表は中耳炎でチュ−ブを留置している乳幼児の生活の質の変化にスポットをあててみました。当院では感染症治療の基本である排膿を重視して積極的な外科的治療を行っているため、内服だけではあまり効果がなかった中耳炎難治例の受診数が多いという特徴があります。学会会場では当院のシステムや看護業務内容に対する質問を多くいただき、また他県での中耳炎治療に関する情報交換も行うことができとても充実した発表でした。今後もより良い看護を患者のみなさんに提供できるように努力していきます。

     (会場前にて撮影)

     (ポスタ−発表の前で撮影)

▲ 上へ(一覧へ)戻る

第38回日本看護学会・成人看護Uに参加>

        平成19年8月28日・29日

去った8月28日・29日の両日、北陸の地、福井県において開催された日本看護学会成人看護Uへポスタ−セッションの形で参加させていただきました。あいにくの雨模様でしたが会場は熱気にあふれ、発表する私達も緊張の中で他県からの参加者より質問がたくさんあり、刺激を受ける2日間でした。

今回はSAS(睡眠時無呼吸症候群)の治療CPAPが困難な症例への耳鼻科からの看護介入をテ−マに発表させていただきました。専門内科との連携などまだまだ課題はたくさんありますが、今後も学習を深め引き続き取り組んでいきたいと思います。

最後に北陸のおいしい海の幸をいただき満腹した3人でした。

  

(学会会場前にて)           (学会で発表している様子)

(発表用ポスタ−)


▲ 上へ(一覧へ)戻る

      <第37回日本看護学会に参加>
        平成18年8月31日〜9月1日

  平成18年8月31日から9月1日、大分県別府市で開催された第37回日本看護学会(成人看護U)に私達も参加させて頂きました。平成11年から小児看護や地域看護といった分野で県外の学会で発表する機会を得て6題目の演題となった今回は、当ホームページでも紹介している良性発作性頭位めまい症の理学療法における看護の役割を、これまでの患者様とのかかわりを振り返り検討・考察し発表しました。耳鼻科領域のめまい疾患では良性発作性頭位めまい症が一番多いことや、このめまいには理学療法が有効であることなどはあまり知られておらず、他県で耳鼻咽喉科の看護に携わっている看護師の方との意見交換もでき、実り多きものとなりました。
  今後も、受診して下さる患者様により質の高い心のこもった看護を提供できるよう日々邁進し、そのためにもいろいろな事にチャレンジします!
                              
   
<会場入り口にて>

<発表ポスターの前で>      <学会会場の様子>


▲ 上へ(一覧へ)戻る

 <第14回仁愛会研究発表会への参加>

 当院では開院2年目から毎年院内研究発表会を催してきました。6年前からは地域支援病院の浦添総合病院の研究発表会へも参加させて頂き毎年演題発表を行っています。今年も2演題を発表することになりました。今回その一つの抄録を読んでいただこうと思い掲載します。耳鼻科で関わることの多い乳幼児の中耳炎についてのもです


「たかが中耳炎、されど中耳炎」

【はじめに】

 中耳炎は乳幼児期に多い疾患で以前は服薬により簡単に治癒していたが、耐性菌の出現や集団保育の低年齢化など、さまざまな要因を背景に年々、難治化している。耳鼻咽喉科学会でも小児急性中耳炎診療ガイドラインが出されるなど、抗生剤の使用方法や外科的治療の重要性について現在、活発に論議されている。その中で当院は開院当初より感染症治療の基本となる排膿や排液に重点を置き、中耳炎に対して鼓膜切開や鼓膜チューブ挿入術(以下チュービングと略す)などの処置を積極的に実施している。その為、内服治療で効果の乏しかった中耳炎難治例で外科的治療を求める受診例が多い。そこで今回、これらの症例の臨床経過を検討した。

【研究目的】

 症例検討を通してチュービングの適応例及びチュービング後のQOL変化を再認識し、治療に対する理解を深め今後の患者教育を強化する。

【研究方法】

対象:平成18年に当院でチュービングを実施した乳幼児

方法:カルテより背景や治療経過、保護者のSデータなどを情報収集し分析した

【結果】

 チュービングの対象となった乳幼児は大別して二群に分けられた。一方は耳症状に乏しい群、他方は明らかに耳痛や発熱、耳漏といった典型的な中耳炎症状を反復したり、遷延化した群である。後者が治療の説明に比較的容易であるのに対し、前者はやや困難である。しかし治療後の経過を検討するとQOLの改善は明らかであり治療の有効性が確認できた。以下に典型的な症例をそれぞれ呈示する。

・症例1 7ヶ月男児、家庭保育児

 930日再来。9月に入り鼻漏と咳をくり返し小児科で内服加療中であったが耳漏も伴っていると当院へ来院。両急性中耳炎で当日、鼓膜切開を実施し、その後、服薬治療で経過をみた。症状には改善が見られ、鼻漏や耳漏はすぐに消失し機嫌も良くなっていたが、鼓膜閉鎖後、所見では両滲出性中耳炎があった。服薬だけでは治療効果が上がらずチュービングを勧められ1031日実施となった。チュービング前、母親より「耳も触らないし機嫌もいいのに」と治療を迷っているコメントもあったが、実施後は「チューブを入れてから表情が良くなって反応がいいです。気がつかなかったけど耳のせいで鈍くなっていたのですね」と話されていた。経過順調で現在、服薬もなくチューブの確認で定期通院中である。

・症例2 16ヶ月男児、保育園児、喘息あり

 1023日初診。今年の3月肺炎で入院時に中耳炎を併発し鼓膜切開を実施。近医でセフェム系抗生剤を中心に半年近く内服加療を続けているが、機嫌が悪く鼓膜切開後の耳漏が遷延していると当院へ来院。チュービングを勧められ26日実施となった。耳漏培養よりBLNARが検出されたが重曹水の鼻洗浄にも力を入れ、10日間程で耳漏は完全に消失。11月中旬には服薬も中止となり現在、チューブの確認で定期通院中である。母親が笑顔で「機嫌がすごく良くなって夜も眠ってくれるようになりました」と話されていた。

【考察】

 チュービングの適応は中耳炎の反復、難治例であり、鼓膜切開を含めた治療を実施しても治癒に導くことが困難な場合などである。不要な服薬が避けられ、機嫌や音の反応に改善があり、大きな治療成果を確認できた。その一方で“たかが中耳炎”と軽視され、成長と共に治る病気と放置されたり、漫然と服薬治療だけが行われているケースも少なくない。しかし現状は“されど中耳炎”であり、多くの難治例を前に看過出来ないのが率直な感想である。乳幼児の場合、難聴を訴えることが難しく無症状であることも多いが、治療後に初めて音に対する反応の変化に気がつくこともある。外からの刺激が大事な乳幼児期だからこそ、中耳炎による難聴を遷延させるべきではないと考える。

私達看護師は実際に治療を施す立場ではないが、難治例を抱える保護者から「チューブを入れてよかった」という喜びの声を聞く機会が多く、その必要性を痛感している。もちろんチュービングにより稀に鼓膜穿孔が残存することもあるが、現在は穿孔閉鎖術も簡素化されており、むしろメリットの大きさを看護師も十分に理解し啓蒙していけるよう努力したい。


▲ 上へ(一覧へ)戻る

<第15回仁愛会研究発表会への参加>

2008年2月24日に地域支援病院浦添総合病院の研究発表会がありました。今回は急性感音性難聴についての発表をさせて頂きました。

          「耳症状の困りごと」

      〜急性感音性難聴の分析を通して〜

【はじめに】

 急性感音性難聴は、原因不明の急性疾患である。一般的に発症から治療開始までの期間が早期であれば内服薬で改善する予後良好な例が多い。しかし中には緊急入院が必要となる例や、再発・悪化し重篤な聴力障害を残す例も混在する。予後を左右するのは初期の取り扱いで、早期に治療を行う方が望ましいとされている。その為発症の経過を的確に把握する問診が最も重要で、その後の治療に大きく影響すると言える。

 今回、当院における過去5年間の急性感音性難聴の症例を調査・分析し、今後の看護師の役割について検討したので報告する。

【研究対象】

 平成14年6月〜平成19年5月までの期間、急性感音性難聴と診断された患者493名。

【研究方法】

 診療録より年齢、性別、発症〜治療開始までの期間、主訴、検査データ、予後などを情報収集し分析した。

【結果】

  • 対象症例は493例で男性186名、女性307名、男女比1:1.65と女性に多くみられた。発症年齢は5〜90歳で、61〜70歳に98人と一番多く、次いで31〜40歳に85人という結果であった。罹患部位では左294名、右196名、両耳3人で左右比1.5:1と左に多くみられた。
  • 主訴に関しては、耳閉感178名、耳鳴161名、難聴51名、耳痛28名、眩暈25名、聴覚異常51名であった。

 

  • 発症から治療開始までの期間については0〜3日で受診が247名、4〜7日124名、8〜14日59名、15〜30日33名、31日以上9名、不明21名となった。

 

  • 聴力障害の程度については、30dB以内の軽度難聴が424名ともっとも多く、30〜60dBの中等度難聴49名、60dB以上の高度難聴が17名、両耳3名であった。
  • 予後は治癒257名、改善68名、不変53名、入院57名、他院へ紹介7名であった。

【考察】

 急性感音性難聴は、その名にある様に急に難聴を発症すると思われがちであるが、症状として難聴や眩暈を自覚するよりも、耳閉感や耳鳴を訴える患者が圧倒的に多く、中には軽い異和感や耳痛のみで発症した患者もいる為、症状を安易に考え、発症してから長い期間をおいて受診する患者も多い。実際に、治療をしても聴力が全く改善しなかった不変の群では、ほとんどの患者が二週間以上経過してから、当院を受診していた。早期治療を行う為にも、各医療機関で最初に関わる看護師が十分な知識を持って問診を行い、これらの症状を見逃さず、早期に専門医を受診するよう勧めるなどの働きかけが必要である。また、中には早期に受診し治療を開始したにも関わらず、治療を中断してしまったり、安静が保たれずに聴力が改善されないままの患者もみられた。それらの事から、看護師は単に症状のみの問診だけではなく、患者背景(生活習慣や抱えている不安等)にも目を向け情報を収集し、有効な疾患教育・生活指導を行い、難聴等の障害を残さないよう、治癒への援助を目指していかなければならないと実感した。

 

*最近、若手有名女性歌手が突発難聴で片耳の聴力を失うというニュースがあり、疾患に対する情報もTVで 流れました。そのひとつである急性感音性難聴は外来でよくみられる疾患です。急性期の病院ではあまり知られてない開業医レベルでの情報提供ができ、フロアからの質問も多く頂きました。

疾患については「耳鼻科の病気」で紹介しています。

 

▲ 上へ(一覧へ)戻る