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院長の執筆文

 

小児の難聴手術
専門医と相談、慎重に

難聴と一口でいっても原因はさまざまですが、今回は小児に多い滲出性中耳炎(鼓膜の内側に水や粘液がたまる病気)と鼓膜に穴の開いた慢性中耳炎の手術についてお話します。

皆さんは誰でも一度は耳の中に水が入って不快な思いをされた事があると思いますが、これはあくまでも鼓膜の外側がふさがった状態です。それに対して滲出性中耳炎の場合、鼓膜の内側に水がたまるため抜けにくく難聴を来たします。初期であれば薬で簡単に治ってしまいますが、小児の場合、難聴の訴えが上手に表現できず知らず知らずのうちに重症化していることがよくあります。

こういうときに耳鼻科では鼓膜を小さく切開し、たまった液体を抜いてしまいます。するとそれまでの耳のふさがった症状から開放されるため、難聴の改善とともに機嫌がよくなります。切開した鼓膜は数日で閉じてしまいますが、その後で再発を繰り返すこともしばしばです。最近このようなケースが増えてきている印象を受けます。

中耳は鼻の置くと耳管という「くだ」でつながっていますが、この「くだ」の働きが悪いために、水がたまると言われています。鼓膜に小さな穴を開けておくことで水はたまらなくなります。つまり中耳という部屋の換気を行うために耳管という一つの窓に加えて対側にもう一つの窓を開けることで空気の通りが良くなる理屈です。

鼓膜に小さな窓を作るために、切開した穴に特殊なチューブをはめ込んでおく手術を「中耳チュービング」と呼んでいます。このチューブは材質にもよりますが、大抵は数ヶ月で自然に抜け落ちてきます。チューブが入っている間は定期的に病院で診察を受け中耳炎の状態をチェックしてもらい、また外から耳に水を入れないような注意が必要です。

さてこれまでは鼓膜に穴を開ける手術でした。それでは鼓膜に穴が開いて難聴を起こしている場合、つまり穴をふさぐ手術についてお話します。小児の場合、鼓膜に穴が開いていても難聴はほとんどなく、また自然に閉じてしまいますので手術の対象は限られてきます。しかしながら、鼓膜に大きな穴が開いて外からばい菌が入り化膿しやすい場合、あるいは難聴を起こすようになると手術で穴をふさぐ必要があります。

穴が小さいうちはキチン膜という特殊な材料を鼓膜に張り付けるだけですので外来で簡単に出来ます。ただこの方法で閉じにくいような場合には、耳の後ろに約一センチ程度の小さな切開を加えて取り出した組織片を用いて鼓膜の穴をふさぐ手術を行います。大人ですと局所麻酔下で可能ですが、小児では全身麻酔下で数日の入院が必要です。穴をふさぐ時期は発育段階の小児ではより一層需要で、中耳炎の経過や年齢、鼻炎やちくのう症の状態など複雑な要素も関連してきます。ですから手術に際しては特に全身麻酔、入院を要する場合、専門医とご相談の上慎重に決めていただきたいと思います。

1999年  沖縄タイムス 「命ぐすい耳ぐすい」   (源河朝博)