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院長の執筆文

 

乳幼児の中耳炎
外からは気づきにくい

常夏の島沖縄でも、冬から春にかけかぜひきの患者さんは後を絶ちません。今回は、かぜをひきやすい乳幼児に頻発する中耳炎について話したいと思います。

中耳炎というと真っ先に思い浮かべる症状が、「耳が痛い」とか「耳だれ」という急性中耳炎の症状かもしれません。しかしながら、医療機関の充足でかぜの初期に病院受診者が増えたことにより、このような典型的な急性中耳炎は目立たなくなってきたように思います。急性中耳炎の原因となる「ばい菌」を殺す抗生物質がかぜの初期に投与されるようになったことも一因です。

ところが、ばい菌が死ぬことにより耳の痛みや耳だれがなくなる一方で、炎症の結果、鼓膜の内側にドローッとした液が残る中耳炎が特に乳幼児に増えてきました。「痛み」や「耳だれ」がないだけに外からは気付きにくいのかもしれませんが、注意深く観察している父母の話を聞きますと、「夜泣き」「機嫌が悪い」「ミルクの飲みが悪い」などの症状を耳にします。大半は放っておいても治る病気なのですが、鼓膜の内側がふさがった状態が長引いたのでやはり不愉快です。

乳幼児の場合、かぜの後で鼻水だけがなかなか治らずに耳鼻科を受診するケースが多いのですが、そのような患者さんにこのような中耳炎がよく見つかります。最近では、耳に異常がないかと気に掛ける父母が増え、かぜひきの多いこの時期は耳鼻科の外来は小児科ではないかと思われるくらい赤ん坊でごった返す状況です。

中耳炎は元来、軽いうちであれば薬や簡単な処置でスムーズに治ってしまいます。ところが、これらの治療にもかかわらず、長引いたりだんだんひどくなってくることもあります。このような場合、耳鼻科では鼓膜に小さい穴をあけ、貯留液を抜き取る鼓膜切開術を行います。そうすると、中耳炎に伴う症状はかなり軽減されるうえ、鼓膜の小さな穴を通して中耳の喚起がスムーズになり、中耳炎の治りが早くなるのです。鼓膜切開の直後から、それまでうっとおしい症状から解放されたという話は日常茶飯事です。

ところが、いったん症状がなくなっても、乳幼児の場合、鼓膜の小さな穴がふさがった後ですぐに再発するケースもしばしば経験します。鼓膜切開をすればそれで済んでしまいますが、短期間に何度も繰り返すのはやはり考えものです。このような場合、鼓膜切開を一歩進めて、穴が一定期間(通常は数ヵ月)ふさがらないように小さなチューブを鼓膜にはめ込んでおく治療もあります。かぜをひきやすい乳幼児で、中耳炎を頻繁に繰り返すことがわかっている場合に効果的です。

いずれの治療にせよ、基本的には鼓膜の内側の貯留液ができるだけ早く抜け、しかも繰り返しを最小限に抑えるという目的で一貫しています。ですからかぜのひき始めからの経過がその治療方針に大きく影響するものと考えてください。この機会に、乳幼児の表情の変化に耳のトラブルを重ねて考えてみてはいかがでしょうか。

1996年 琉球新報 「ドクターの談話室」   (源河 朝博)